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【上田比呂志×IIA】インタビュー前半 ディズニーを超える日本の「おもてなし」。世界で勝つための“戦わない武器”とは?

「本物に触れ続けることが、人を本物にする。」

「不易流行」「守破離」――
日本には、長い時間の中で
磨かれてきた価値観があります。

変えてはいけない本質と、
時代に合わせて変わり続ける柔軟さ。

その両方を大切にする考え方です。

三越でのおもてなしの現場、
ディズニー大学での学び、
そして企業研修や大学での講義を通じて、

「おもてなしの本質」と向き合い続けてきたのが
上田比呂志さんです。

今回のインタビューでは、

・スキルだけでは届かない「おもてなしの本質」とは何か
・本物を見分ける力はどのように育つのか
・日本文化を自分の軸として持つ意味

について伺いました。

便利で情報があふれる時代だからこそ、
「本物に触れること」と
「本質を追求すること」の価値が、
改めて問われています。

長年人材育成に携わってきた上田さんの言葉から、
日本文化の強みと、世界へ羽ばたくためのヒントを探ります。

上田比呂志 さん

おもてなし教育の実践者。
元グアム三越社長、フロリダ・ディズニーワールド エプコットセンター日本館ディレクターを歴任。
三越やディズニーでの経験をもとに、企業研修や講演を通じて人材育成とホスピタリティの本質を伝えている。
現在は「大人の寺子屋 縁かいな」「智慧の場」を主宰し、日本文化に根ざした感性教育と次世代リーダーの育成に取り組んでいる。

ディズニーを超える日本の「おもてなし」。世界で勝つための“戦わない武器”とは?

 

— 上田さんは国内外さまざまな場所で活動されていますが、初めて海外に出られたのは、いつ、どこだったのでしょうか。

 

上田比呂志さん
1987年ですね。

社会人になってから、
フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドにある
ディズニー大学に通ったのが、初めての海外でした。

もともとそこに行きたくて三越という企業を選んだので、
三越経由でディズニー大学に行くという、
ちょっとした物語があったんです。

 

— これまで海外のさまざまな環境で過ごされてきた中で、日本人に対してどのような印象を持たれていると感じましたか。

 

上田比呂志さん
最初に行った1987年当時は、今とは少し違って、
日本人はおとなしくて静かで優しい
というイメージを持たれていた気がします。

また、主張するのが得意ではないので、
何を考えているのかわからない
という印象もあったと思います。

 

— 当時は「NOと言えない日本人」という言葉もありましたよね。

 

上田比呂志さん
まさにその頃ですね。

ただ同時に、ソニーのウォークマンが出たり、
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われたり、
日本の勢いが強かった時代でもありました。

今とはかなり状況が違いますね。

 

— 海外に出て、日本の強みだと感じたものはありましたか。

 

上田比呂志さん
おもてなし」ですね。

私は海外に出て、「おもてなし」は
戦わないための武器になると感じました。

私がいたのはアメリカでしたが、
アメリカは能力主義ですから。

競い合って戦って、
時には相手を引きずり下ろしてでも
上に上がっていく文化があります。

でも、おもてなしのベースにあるのは、
気遣いや思いやりですよね。

そういうものが海外では、
戦わなくても人の心を動かす
武器になるのではないかと感じました。

 

— 海外で活動する日本人は、負けてはいけない、前に出なければいけないと、気負ってしまうことも多いと思います。上田さんは逆の発想だったのですね。

 

上田比呂志さん
そうですね。

自分の国の文化の強みは何かを
知る
ことが大事だと思っていて。

海外の良いところは吸収すればいい。
でも、すべてを合わせる必要はないんです。

人を思いやる気持ちや気遣いの心は、
どの文化の人にとっても嬉しいものですから。

私は、ディズニーにある11カ国のパビリオンの中で
日本館を担当していましたが、

顧客満足度の調査で、
おもてなしの評価がディズニーの中でも
ナンバーワン
だったことがあります。

ディズニーはアメリカの象徴ですよね。

アメリカ以外で初めて
ディズニーランドが作られたのは日本でした。

1983年の東京ディズニーランドです。

ディズニーはマーケティング力が素晴らしいので、
ディズニーの理念やコンセプトが
日本人に一番合うと思ったのでしょうね。

だから、日本が選ばれたのだと思います。

 

— 日本人は多様性を受け入れるのが苦手だと言われることもありますが、その点はどう感じていらっしゃいますか。

 

上田比呂志さん
「受け入れる」というより、
多様性を楽しむ」という考え方が
いいのではないかと思います。

何かを受け入れると思うと、
少し苦しくなることもありますよね。

でも、いろいろな多様性があることを楽しむと、
新しいアイデアやひらめきが生まれてきます。

そこを楽しんでしまう方がいいと思いますね。

 

— 「違いを楽しむ」、という視点ですね。

 

上田比呂志さん
そうです。

違っていて当たり前じゃないですか。
家族でも考え方は違います。

違いは、
自分の視野や奥行きを広げてくれるものですから、
人間的に豊かになることなのだと楽しめばいいんです。

ディズニー大学は、いわば
「エンターテインメントのシリコンバレー」
のような場所でした。

世界中から、
「人を楽しませたい」
「エンターテインメントを目指したい」
という学生たちが集まってきて、
喧々諤々とディスカッションするんです。

例えば、モロッコの学生は雪を見たことがありません。

そこで、
「ディズニーに行けばいつでも雪が見られるといいよね」
というアイデアが、多様性の中から出てくるんです。

「日本人には雪があるんでしょ。
四季があるんでしょ。いいよね。
僕たちは雪を見たことがないから、
ディズニーに行けばいつでも雪が見られるといいよね」

そんな発想が出てくるわけです。

 

— 面白い発想ですね。

 

上田比呂志さん
ディズニーにはイマジニアという
ブレイン集団がいるのですが、
そうした学生たちの斬新なアイデアをヒントとして、
後に「ブリザードビーチ」という施設を作りました。

ブリザードビーチは雪山がテーマになっていて、
雪が温暖化で溶けて雪崩が起こったという
ストーリーがあるんですね。

そこへ行くと、いつも雪が見られる。

そういう発想を本当に現実の形にしていくわけです。

それが多様性ということだと思います。

今ないものを形にしていくには、
やはり多様性が必要
なんです。

 

— ディズニーの楽しさやホスピタリティは、多様性に価値を見出して、違いを楽しむところから生まれているのですね。

 

上田比呂志さん
そうです。

ディズニーの最初のアトラクションは
「It’s a Small World」ですよね。

世界中の子どもたちが手をつないで歌っている。
あれはまさに多様性です。

平和な社会を作っていくために、
お互いが歩み寄り、語りかけながら、
お互いの文化を理解していくということですね。

 

— 日本人はその多様性を受け入れることが、あるいは楽しむことが、あまり得意ではないように感じることがあります。そのあたりは、どのようにお考えでしょうか。

 

上田比呂志さん
それも視点の違いだと思います。

おっしゃる通り、
受け入れよう」という言い方をすると、
少しきつく感じますよね。

だから私は、あえて
楽しむ」という言葉を使っています。

視点を少し変えるだけで、
ずいぶん変わるんですよ。

日本には言霊というものがありますから、
物事をどう捉えるかでマインドは大きく変わります。

 

— さきほど、「楽しむ」という言葉を聞いていいなと思ったのに、また「受け入れる」と言ってしまいました。そこから変えていけばいいんですね。

 

上田比呂志さん
そうです。

もう「楽しもう」と思えばいいんです。

 

— 日本人、特に若い方たちが海外に出ていくときに、「こういうマインドセットがあるといい」と思われることはありますか。

上田比呂志さん
不易流行」という言葉がとても大事だと思っています。

「不易」というのは、
変えてはいけない大切なもの

「流行」は、
時代の流れによって変わらなければいけないもの

この二つの組み合わせです。

日本人として何を変えてはいけないのか。

一方で、日本人だからといって頑固に
「受け入れられない」と言っていてもいけません。

時代の流れに応じて、
変えるべきところはどんどん変えていく。
そのバランスが大切なんです。

逆に言えば、
「変えてはいけないもの」を見極める力を磨いてほしい。

それ以外は、むしろ変えた方がいいんです。

私も講義でよく、特に年配のリーダーたちに
「俺たちの時代はね」という言葉は
絶対に使わないでください、とお伝えしています。

これだけ時代の変化が速い中で、
過去の成功体験を語っても説得力はありません。

だから、リーダーたちも
今どんなトレンドが起きているのか、
どんな波が来ているのか、
学び続けないといけないんです。

逆に、若い人たちが海外に出ていくときは、
不易の部分ですね。

日本文化として伝統的に根付いているものは何か、
その本質を学び、
自分の文化に誇りを持ってほしいと思います。

誇りを持てると自信が生まれます

自信があれば、海外でも堂々と振る舞える。
萎縮する必要はありません。

 

— 上田さんご自身も、老舗などさまざまな場所での経験から、不易と流行の両方の大切さを体感されてきたのでしょうか。

 

上田比呂志さん
たまたま老舗だっただけで、
あまり意識していたわけではないんです。

結果としてそういう経験になった、という感じですね。

むしろ、自分がどういうマインドで
向き合うか
ということの方が大きかったと思います。

最初に海外に出るとき、
一つ決めていたことがあります。

1987年のことですが、
「自分が主張できるもの、
きちんとアピールできるものを持っていないと、
海外では通用しない
」と思ったんです。

それで小唄を学んでいきました。

ベイヒルというゴルフの集まりで
小唄を披露したことがあるのですが、
とても喜ばれました。

やはり、日本の文化など、
自分が紹介できるものを
一つ持っていくといいと思います。

何か自分がPRできるもの、
得意なものを一つ仕込んでおく。

それが日本の文化であれば、なお良いですね。

 

— 例えばどのようなものが考えられるでしょうか。

 

上田比呂志さん
今ならアニメでもいいと思います。

アニメはすでにグローバルな文化で、
日本が世界に誇れるもの
ですから。

例えば、アニメにすごく詳しい、
といったことでもいいと思います。

 

— 日本人にしか語れない背景を説明できるようになるといいですね。

 

上田比呂志さん
そこなんですよ。

なぜ日本のアニメが世界中で支持されているのか、
分かりますか。

 

— 映像の美しさや、心情の細やかな描写などでしょうか。

 

上田比呂志さん
そういうことです。

日本の気遣いやおもてなし、
思いやりといった文化が流れていて、
とても繊細なんですね。

例えば『鬼滅の刃』でも、
煉獄さんが母親から言われる言葉があります。

天から与えられた力が強い者は、
弱い者を助けるためにその力を与えられている

という言葉です。

こういう日本人特有の価値観が、
海外の人にも響くんです。

もちろん画力の繊細さもありますが、
人の心に入っていくような、
おもてなしや気遣いの文化
アニメにも表現されています。

鬼滅の場合は、私は神話の世界だと思っています。

禰豆子は天照、炭治郎はスサノオ。
鬼が出てきて、神楽の舞も出てくる。

日本の神話をうまく取り入れながら
文化を発信しているから、
世界に響くんです。

アニメーターの技術も含めて、
これは日本の大きな武器です。

根底にあるのは、思いやること、気遣うこと、
そうした優しい日本のおもてなしの文化だと思います。

 

— 自分の好きな分野で、それが日本的にどんな背景を持っているのかを調べておくと、海外に出たときに大きな武器になりそうですね。

 

上田比呂志さん
そうです。

なんでもそうですが、
結局は本質を見つめることなんです。

私が当時ディズニーに行きたいと思ったのも同じです。

私はもともと実家が日本料理屋で、
祖母や母が女将として
お客様を楽しませている姿を見て育ちました。

それで自分も
人を楽しませる仕事がしたい」と思ったんです。

その本質を学ぶにはどうすればいいかと考えたとき、
アメリカには世界中の人を楽しませている
ディズニーがある。

だからそこに行きたい、と思いました。

興味のあることがあるなら、
その本質を徹底的に追求していけばいいんです。

 

— 本質を追求する力は、どのように育まれるのでしょうか。

 

上田比呂志さん
やはり好奇心ですね。

日本にはオタク文化があります。
オタクの人たちは、とことん追求しますよね。

あれと同じです。

自分が何に興味があるのかを見つけて、
上辺だけではなく、
根っこに流れるものまで徹底的に学びきる

そうすると、表面では見えなかったものが見えてくる
それが本質です。

おもてなしも同じです。

ですから、スキルだけ学んでもダメなんです。

 

— スキルだけでは対応しきれない、ということですね。

 

上田比呂志さん
そうです。

お客様の状況は毎回違います。

天気でも変わるし、
家で何かあった日なら気分も違います。

だから対応も変えていかないといけない。

そこで大切になるのが「守破離」です。

「守」はマニュアル通りにしっかりやること。
「破」は臨機応変にアドリブができること。
「離」は、お客様の期待を大きく超えることです。

ここまでしてくれるの。よかったわ
と言っていただけるかどうか。

これはマニュアルでは書ききれません。

本質を学ぶことで、
どうすればいいかを心が教えてくれるようになるんです。

 

— 今の日本の教育や社会について、「ここが変わるといい」と思うことはありますか。

 

上田比呂志さん
どうしても手っ取り早い
スキルやロジックを教えがちですよね。

それも必要ですが、やはり両輪だと思います。

私は山梨県立大学で、
「おもてなしマイスター講座」の
特任講師をしていたことがあります。

そのときは三つのテーマで授業をしました。

一つは、おもてなしの本質に触れる体験談を伝えること。
二つ目は、コミュニケーションと気遣いの力を磨くこと。
三つ目は、自分の人生を見つめ直す機会を作ることです。

「おもてなしマイスター講座」というと、
おもてなしを教える講座だと思いますよね。

でも、どちらかというと、
さきほど触れた根っこの部分を
作っていくこと
をやったんです。

そうしたらすごく好評で、講座を重ねるうちに、
同じ学生でもレポートの質が変わってくるんです。

やはり、ちゃんと伝わるものがあるのだと思いました。

また私は「知恵の場」という、
大人の寺子屋のような場も作っています。

吉田松陰の松下村塾のように、
ネクストリーダーを集めて感性を磨き合う場です。

スキルではなく、心や感性を磨く場ですね。

こういうものを教育の中にも
どんどん取り入れていくといいと思います。

結局はバランスです。

スキルも大事ですが、
中庸、つまり偏らないことが大切です。

ですから、論語や中庸を学ぶのもすごくいいと思います。
古典には本質がありますから。

 

— 「守破離」の中でも、社会で求められるのは「破」や「離」の段階だと思います。その部分はどうすれば身につくのでしょうか。

 

上田比呂志さん
実は多くの場合、「守」ができていないんです。

いきなり「破」や「離」に行こうとしてしまうけれど、
職人が技を磨くように段階を踏まないといけません。

私は三越で働いていたとき、
多くのおもてなしの匠に出会いました。

例えば、のし紙を一枚一枚筆で書く職人がいました。

今は印刷が多いですよね。

でも本物の筆書きののしがかかっていたら、
贈り物の価値はまったく違って見えます。

あるとき
「手間がかかりますよね。大変じゃないですか?」
と聞いたら、その方はこう言いました。

「だって、お客様が喜ぶじゃない」と。

理由はそれだけなんです。

お客様が喜ぶからやる。
当たり前の基準が高いんですよね。

それが守破離ということなんです。

だから組織として、
「当たり前の基準」をどう高めるかが大事なんです。

他から見るとすごいねと言われることでも、
その組織では当たり前になっている。

そういうおもてなしやサービスをどう作っていくか。

そのためには、
基礎からしっかり積み重ねていくことが必要です。

 

— 型も大事なのですね。

 

上田比呂志さん
はい。

型ができていないのに、
その先へ行こうとすると、
それは「型なし」になってしまうんですね。

今はいろいろな情報が簡単に手に入るので、
早く本質を知りたいとか、守破離でいう
「離」の部分を先に知ったような気になって、
途中を飛ばしてしまいがちです。

でも、それでは
「知ったつもり」になっているだけなんです。

本来、「離とは何か」というのは、
積み重ねの中で自分自身が見出していくものです。

誰かに教えられて手に入るものではありません。
自分で作っていかなければならない

だから、どんなに本を読んでも、
どんなに講義を受けても、
それだけでそこに到達できるわけではないんですね。

私はこれまで、大手企業でも数多く、
おもてなしや人材育成の研修をしてきました。

企業は本当に多くのお金を投資しています。
でも、それでも簡単には変わらない

やはり時間がかかるし、
組織として腹を据えて取り組まないと、
本物のところまではなかなかたどり着けません。

むしろ今は、
便利になったからこそ難しいのかもしれません。

昔の本物のおもてなしの匠たちは、
そういう近道のない中で積み重ねながら、
そこへたどり着いてきた
わけですから。

 

— 今はその「上澄みの話」が簡単に手に入ってしまうのですね。

 

上田比呂志さん
だから、入ったばかりでも
分かったつもり」になりやすい。

でも、実際には使えないんです。

偽物にはなってほしくないですね。

本物を見分けるには、
本物に触れ続けるしかありません。

本物に触れていれば、
偽物が出てきたときに自然と分かるようになります。

本物しか見ていないからです。

そうやって自分を磨いていくこと。

そして、自分が本当に興味を持っていることがあるなら、
その本質を根っこまでしっかり追求していくこと。

これはグローバルに、海外へ出ていっても通用します。

自分の軸が定まり、
自分の文化や才能を堂々と表現できる人は、
海外でもどこへ行っても魅力的
なんです。

 

— 本物に触れるというのは、遠くへ行ったり、お金をかけたり、どうしてもコストのかかることにも思えます。遠回りに思えることもありますが、それが結局、海外へ出たり、何かチャンスが巡ってきたときに自分を助けてくれるものになるのでしょうか。

 

上田比呂志さん
そうですね。

私も、あのときディズニー大学に行っていなかったら、
今の自分はありません。

あの経験は本当に大きかったと思います。

 

— 日本人としての軸を持つには、どうすればいいのでしょうか。

 

上田比呂志さん
海外に出ていくときに私が意識していたのは、
まず自国の文化を学び、そこに誇りを持つことです。

誇りを持てると、それが自分の軸になります。

それから、自分が本当に興味のあることは何かを、
きちんと見つめる
こと。

これは無理に作れるものではありませんから。

もし行き先が決まっているなら、
相手の文化もきちんと学んでおくことも大事です。

日本の文化への誇りと、
相手の文化への理解の両方があれば、
コミュニケーションも取りやすくなります。

 

— 日本に誇りを持てない若者が多いと言われる背景には、やはり日本文化そのものを知らない、学んでいないということもあるのでしょうか。

 

上田比呂志さん
あると思います。

そもそも学んでいなければ、誇りは持てませんからね。

今、朝ドラで小泉八雲の世界を
題材にした作品もありますが、
ああいうものを見ても思うんです。

今から120年ほど前の時代に、
すでに日本の妖怪や文化を
世界に伝えていた人がいたわけです。

日本人があまり注目していないものでも、
外から見ると非常に魅力的な
文化だったりするんですよね。

マザー・テレサが来たときも、
チャップリンが来たときも、
日本は素晴らしいと言っていた。

そういうことは昔からあるんです。

もう一つは、
日本にいながらでもいろいろな人と交流して、
多様性に触れることだと思います。

そうすると自分の軸が定まってくる

私自身、芸人さんや漫画家、
ミュージシャン、役者さんなど、
違うジャンルの友人がたくさんいます。

そういう人たちと話していると、
自分の感性が磨かれるんです。

そして、自分の強みはここだなとか、
自分はこういうことを大事にしているということが、
だんだん見えてくる。

だから、いろいろな方向から
自分を見る機会を作るといい
と思います。

同じ業界の人、同じ会社の人だけと付き合っていると、
自分のことが分からなくなってしまう。

その世界の中だけで完結してしまうからです。

 

— みんな似ているので、自分の強みも見えにくいし、違いも分かりにくい。

 

上田比呂志さん
下手をすると、見方が偏ってしまいますね。

だから、いろいろなジャンルの人と
コミュニケーションを取る練習をしておくと、
海外へ行ったときにも多様性を楽しむということが
自然体でできるようになる
と思います。

 

— 自分とは何か、自分の軸が欲しい、という悩みを持っている人も多いですが、それも結局は、違う人たちとの関わりの中で見えてくるものなのですね。

 

上田比呂志さん
そうなんです。

自分の存在というのは、結局、
他者との関係性の中で見えてくるものですから。

例えば家族の中でも、
母親としての自分がいたり、
妻としての自分がいたりする。

関係性によって、自分の出方は変わりますよね。

そういう意味では、いろいろな人と付き合うことで、
自分とは何か」が少しずつ見えてくる。

よく自分探しと言いますが、
そのヒントは、
他者との関わりの中にあるのかもしれません。

だから私は、本当にいろいろなジャンルの人と
付き合うようにしています。

 

— 最後に、これから海外へ出ていく若い方たちへメッセージをお願いします。

 

上田比呂志さん
ぜひ、多様性を楽しんでみてください。

海外に出ることで、
これまで知らなかった自分に出会えると思います。

その中で、
自分の人生の羅針盤を作っていってほしいんです。

私たちは毎日、真っ白な白紙を与えられて生きています。

そこにどんな彩りを加えていくかは、
自分がどう行動するかで決まります。

海外という世界を見ることで、
今までとは違う色が人生に加わる。

そうすると、人生はもっと豊かになると思います。

ですから、ぜひ海外へ出ていって、
豊かな人生を築いていってください。

そして、その白紙のページに、
自分だけの素敵な物語を描いていってほしいと思います。

 

— ありがとうございました。

 

上田比呂志さん
ありがとうございました。

 

 

上田比呂志さん プロフィール

東京都出身。
三越に入社後、接客や人材育成の現場を経験。
その後、グアム三越社長兼ティファニーブティック支配人を務める。
さらにアメリカ・フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド
エプコットセンター日本館ディレクター取締役として、
世界中から訪れるゲストに日本文化とおもてなしを届ける現場を担った。
帰国後は、企業研修講師・講演家として活動。
ホスピタリティ、人材育成、リーダーシップをテーマに
国内外の企業・教育機関で講演や研修を行っている。
現在は、大人の心と感性を磨く場「大人の寺子屋 縁かいな」
感性を磨く非日常空間「智慧の場」を主宰。
日本文化に根ざした「不易流行」「守破離」の思想を軸に、
おもてなしの本質と人の在り方を伝え続けている。