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【出口治明×IIA】インタビュー チェンジメーカーは「特別な才能」ではない ~人・本・旅が人生をつくる~

世界を動かす人の言葉は、
ときに「成功の再現性」として切り取られます。

しかし、
Inspire Intelligence Academy(IIA)が届けたいのは、
結果の手前にある「思考のクセ」や「切り替え方」、
そして、言語化されにくい人生の“軸”です。

今回お話を伺ったのは、出口治明さん。

脳梗塞を経験され、
現在も言葉を発することに不自由さを抱えながらも、
短い言葉の中に、人生と社会を見通してきた人
ならではの圧縮された知性が宿っていました。

このインタビューで語られているのは、
「挫折をどう意味づけるか」ではありません。

・失敗を抱え込まないための、出口さんの切り替え方
・人が“尖っていく”ために必要なもの
・20代・30代をどう使うか
・そして、若い人に今すぐ伝えたいこと

出口さんの静かな言葉の中から、
未来をつくるための「学び直し」のヒントを探ります。

出口 治明  さん

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒。
日本生命を経て、2006年にネットライフ企画(現・ライフネット生命保険)を創業。2012年上場。
立命館アジア太平洋大学(APU)学長を歴任し、現在は学校法人立命館顧問、APU名誉教授。
歴史・哲学・世界史など幅広い教養分野で著書多数。

チェンジメーカーは「特別な才能」ではない ~人・本・旅が人生をつくる~

 

チェンジメーカーとは何か

 

— 出口さんはAPU(立命館アジア太平洋大学)で「チェンジメーカーを輩出したい」とお話しされています。出口さんの考えるチェンジメーカーとは、どのような人でしょうか?

 

出口治明さん
2025年12月に出版した
僕の書籍タイトルにもしたのですが、

僕の好きな言葉に
誰も行ったことのない場所へ行こう。
そして、誰もしなかったことをやろう

というものがあります。

言わば、そういう発想をして、
実行できる人です。

日本だと「変わった人」「尖った人」
と言われるかもしれない。

でも、そういう人こそが、世界を変えて、
もっと明るくより良くしていくと考えています。

APUでは、「APUで学んだ人たちが世界を変える」
というビジョンを掲げていますが、
世界を変えられるのは尖った人で、
僕の本を読んで「もっと尖ろう」と思って
入学してくる学生もいます。

人は何でできているのか
──「人・本・旅」

 

— 尖った人になるために、出口さんが提唱されている「人との出会い」「読書」「旅」が重要なのでしょうか。

 

出口治明さん
そうですね。

尖った人は自分で問いを見つけ、
自分ならではの考え方をして、アウトプットします。

自分ならではの考え方を持てるようになるには、
幅広い勉強を通じて、様々な知識を
頭にインプットする必要があります。

そのことを「思考軸」と僕は呼んでいて、
その人ならではの物事の見方のようなものです。

多くのことを学んで太い思考軸を持っている人ほど、
幅の広い考え方ができます。

太い思考軸を養うために、
僕が勧めているのが本、人、旅
です。

割合としては、
本が50%、人が25%、旅が25%です。

旅で新しいものを知って、
読書でそれを言語化して理解する必要があります。

 

— そこに「仕事」は入らないんでしょうか。

 

出口治明さん
仕事は入っていません。

ただ、仕事は「縁」でもあるし、
物事のプランを作るようなものも含めて、
いろんなものがそこに入っている。

主婦の家事も仕事の一つで、
企業に勤めているか、起業するかなどに関わらず、
誰でも日常でやるものです。

太い思考軸や価値観、
世界を変える尖った人になるための土台は、
仕事の中身そのものより、人との関わりや読書、
旅で作られる
と思っています。

僕自身も企業に勤めていた経験もありますが、
仕事にそれほど執着はしませんでした。

インプット先として大事にしていたのは、
本、人、旅です。

失敗や挫折はどう扱うべきか

 

— 人は挫折や失敗に意味を持たせたがるところがあります。出口さんはどう考えますか。

 

出口治明さん
意味はあると思います。

でも、終わったこと、起きてしまったことを
グズグズ考えるのは無駄です。

僕も脳梗塞を患い車椅子生活を余儀なくされましたが、
そのことでクヨクヨ悩んだり、
「なぜ脳梗塞になってしまったのか」
などとは考えませんでした。

もう起きてしまったことは変えられず、
今できることで何とかするしかありません。

 

— 頭では分かっていても、切り替えられない人も多いと思います。

 

出口治明さん
失敗は「ネタ」にして笑い飛ばせばいいのです。

僕の場合、元来とても短気な性格なこともあり、
グズグズ考えるのは「3秒」だけです。

人生100年時代で長いのだから、
そのうち1年は悩んでもいいって言う人もいるけれど、
迷ったり悩んだりする時間はもったいない。

さっさと決めて、次の行動に移りたいのです。

だから、たいがい即断即決です。
悩むのは3秒で十分です。

 

20代と30代はどう生きるのか

 

— このインタビューは若い方、これから世界へ飛び出していく方に読んでいただきたいと考えているのですが、20代はどう過ごすのがいいでしょうか?

 

出口治明さん
20代は大学を卒業して、
社会人になったばかりの頃です。

大人の見習い期間で、迷ってもいい。

周りと比べて焦らなくていい時期です。

最初にお話した、
本、人、旅を通じて、太い思考軸を養い、
自分なりに考えられる土台を
しっかり作り上げる期間が20代
です。

自分が何に興味を持っているかを探して、
好奇心を持って何かに取り組めば、
考える力は自然と身につきます。

20代のうちに旅をして、本を読んで、
考えるきっかけを見つけることが大切です。

だから、早熟で20代のうちにスターになったり、
成功する人を見て焦るのではなく、
しっかりインプットを深めて、
チェンジメーカーへの道を歩み始めてほしい
と思います。

話はそれますが、
親が子どもの好奇心を奪うのは最大の罪で、
一番子育てでやってはいけないことですね。

 

— 「尖った人」は、後天的になったり、人数を増やせるものなんでしょうか?

 

出口治明さん
尖った人は、
20人に1人くらいしかいません。

でもそれでいいと思っています。

19人は普通の人で、
1人が尖ったリーダーであることが通常で、
全員がリーダーだと世界は動きません

20代で迷いながら、自分がリーダーなのか、
補佐する側なのかを見極めればいい
んです。

 

— 20代は焦らず、土台をつくる時期ということでした。では30代は、どういう期間でしょうか?

 

出口治明さん
30代は、自分が何で生きていくか、
どう生きるかを「決める」時期です。

20代までは迷いながら就職してもいい。

本、人、旅を通じて、
自分が興味を持っていることを見つけて、
太い思考軸を身につける。

でも30代では、
生き方を決める必要があります。

自分が20代で見つけた「好奇心の種」をもとに、
どのように生きるのか、人生を通じて何をするのか、
どのような仕事に取り組むのかを決めてほしい。

人生は何があるかはわかりませんから、
僕も自分が20代、30代の時には
将来ライフネット生命を立ち上げたり、
大学の学長になるなんて夢にも思っていませんでした。

でも、今お話した
20代、30代の生き方をしてきたからこそ、
振り返ると充実した人生を歩んでこれています。

 

出口さん自身の20代
──「不良」と転機

 

— 出口さんご自身は、どんな20代だったのでしょうか?

 

出口治明さん
20代は「不良」でした。

日本生命保険相互会社という
大手企業で働いていましたが、
会社のルールに従わないで不良みたいな社員でした。

学生時代に弁護士になりたくて、
100%受かると思っていた司法試験に落ち、
一社だけ受けていた会社に就職したので、
熱意を持って取り組むはずがなく、
20代は仕事がくだらないと思っていました。

 

— そこから、いつ意識が変わったんですか?

 

出口治明さん
30代になってからです。

当時、保険業法の大改正があって、
保険業務のあり方が大きく変わりました。

法律を学んでいた僕にとって、
仕事が「くだらない」から「面白い」に
変わった
のはこの時です。

もう一つ、
31歳で日本興業銀行に派遣されたのも転機でした。

興銀の中は蜂の巣みたいに
やかましくて活気がありました。

新卒で入社して以来働いていた
生命保険会社とは違う会社で刺激を受けて、
仕事への取り組み方が変わりました。

ここでもカギになっているのは人です。

 

若い人へ──
今が一番若い。ぜひ世界を見に行こう

 

— 最後に、若い世代へのメッセージをお願いします。

 

出口治明さん
常に今が一番若いのだから、
パスポートを取って海外に出てほしい。

例えば、アメリカに留学する日本人は約1万3000人。
中国人は27万人。

人口差が10倍なのに、
留学者の差は20倍以上です。

パスポートを持っている人も
日本人の6人に1人しかおらず、
せっかく世界有数の旅しやすい
パスポートが持てるのにもったいないです。

旅をしながら本を読み、
人と出会い、刺激を受けることで、
僕がずっとお伝えしている思考軸を養うことができます。

ぜひ世界を見に行ってほしいと思います。

 

— 「体が動くうちに行け」ということですね?

 

出口治明さん
そう。

僕も若い時は教会の頂上まで登れました。

20代なら、特別なトレーニングをしなくても、
若い体力で山に登ったり、
長時間の移動も問題なくできるはずです。

でも年を取ると車椅子になるかもしれない。

僕もまさか自分が
車椅子生活になるとは思ってもいなかった。

ぜひ若い方だけでなく、
今が一番若いから、体が動くうちに、
アメリカでもマチュピチュでもいい。

世界を見て刺激を受けてほしいですね。

 

出口治明さん プロフィール

学校法人立命館顧問、立命館アジア太平洋大学名誉教授、ライフネット生命保険創業者。
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒。
日本生命入社後、大阪、東京を経てロンドン現地法人社長、国際業務部長などを務める。
2006年に退職。同年、ネットライフ企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。
2008年4月、生命保険業免許取得に伴いライフネット生命保険株式会社に変更。
2012年上場。2018年立命館アジア太平洋大学(APU)学長、2024年立命館アジア太平洋大学学長特命補佐・名誉教授、2026年学校法人立命館・顧問。
主な著書に「生命保険入門 新版』(岩波書店)、『0から学ぶ「日本史」講義」1~4(文藝春秋)、「人類5000年史」1~6(ちくま新書)、『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)、『座右の書「貞観政要』』(角川新書)、「仕事に効く教養としての「世界史」』1~2(祥伝社)など多数。