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【谷本有香×IIA】インタビュー後半 マイナス100のどん底を知る人だけが、プラス100の喜びを知る。困難を乗り越えない「With」の生き方

谷本有香さんへのインタビュー後編をお届けします。

前編では、
グローバルな視点から見た日本の課題や、
AI時代に求められる個人の在り方、
そして「応援される人になること」の重要性について伺いました。

後編では、
挫折や困難との向き合い方、
感情との付き合い方、
そして「経済は気持ちで動く」という独自の視点に迫ります。

・「挫折は乗り越えるものではない」という考え方
・苦しい経験を価値に変えていく視点
・「笑い飛ばす」という生き方の意味
・経済を動かす「気持ち」とは何か
・「大丈夫だよ」と言える社会へ

4,000人以上のトップリーダーにインタビューしてきた谷本有香さん。

その彼女が、
人生で最もつらかった時期に見出したのは、

「乗り越える」ことではなく、
困難と“共に生きる”という選択でした。

つらい出来事をどう受け止め、
どう自分の力に変えていくのか。

不確実な時代の中で、
どのように前を向いて生きていくのか。

「大丈夫?」ではなく、
「大丈夫だよ」と言える文化が、
人を救い、経済を動かし、社会を変えていく——

谷本さんの言葉には、
その確かな実感と、未来へのヒントが込められています。

※本記事は前後編構成です。
まだ前編をご覧になっていない方は、ぜひあわせてお読みください。

谷本有香 さん

フォーブスジャパン Web編集長。
これまで4,000人以上の世界のトップリーダーにインタビューし、グローバル視点で経済・社会・リーダーシップを見続けてきた。
著書や発信を通じて、「美しい経済」や「個人の在り方」といった視点から、これからの時代における価値創造のあり方を提案している。

世界のトップ4000人を見てきた結論。AI時代に生き残る「唯一の処方箋」とは?

 

— これまで4,000人以上の国内外のトップリーダーにインタビューされてきた中で、「一番緊張した相手」はどんな方でしたか。

 

谷本有香さん
名前は出せないのですが、ある政治家の方ですね。

厳しいことで有名な方で、
共演者を震え上がらせるような発言をされることもある。

私はあまり緊張するタイプではないのですが、
その方とご一緒したときはさすがに
「これは…」と思いました。

 

— どのように対応されたのでしょうか。

 

谷本有香さん
笑い飛ばしました。

萎縮してしまうと番組全体にも良くないと思ったので、
「何をおっしゃってるんですか」と、
あえて軽く受け流したんです。

そしたら、
「そんなに怯えなかった人はあなたくらいだ」
と言われました。

もちろん、傷ついていないわけではないんですよ。
本当は怖いし、泣きたいくらいの気持ちにもなります。

ただ、乗り越えられた理由を一つ挙げるとすると、
「役割としての自分」を作っていたことだと思います。

当時はアンカーをしていたので、
「アンカーとしての谷本有香」という
パーソナリティを自分の中に立てていました。

そのプロフェッショナルな自分なら、
ここでどう振る舞うか


そう考えると、
本来の自分が直接傷つくわけではなく、
いわば”仮面”で受け止めることができるんです。

これには、実はいいことがいくつかあります。

厳しいことを言われても物怖じしなくなる、
というのもそうですし、そもそも私の仕事は、
すごい方々にインタビューする機会がとても多い。

今となっては、キャリアも積んできたので、
正直あまり緊張することもなくなりましたし、
物怖じもしなくなりました。

ただ、若い頃には、
この「役割としての自分」という考え方が、
ものすごく役に立ったんです。

 

— なるほど。その「役割を演じる」ということは、他の場面でも活きていたのでしょうか。

 

谷本有香さん
すごく役に立ちました。

例えば、海外の大統領や首相にインタビューする場面。

何も持っていない20代後半の自分が、
そういう方々に向き合うわけです。

やはり、ものすごく怖い。

そこで、“役割としての自分”を作るんです。

「この方にインタビューをするに値する、
日本の代表なんだ」

そう、自分に言い聞かせる。

その立場で臨むとしたら、
どういう言葉を使うべきか、
どういう姿勢でいるべきか、
どう切り込むべきか。

ある種、それを“演じる”んです。

そうすると、
不思議と堂々としてくるし、
物怖じもしなくなる。

相手も、
「プロフェッショナルなインタビュアーだ」
と認識してくださる。

結果的に、インタビューもうまくいくんです。

考えてみれば、震えているような相手に、
本音を話したいとは思わないですよね。

自分が国の代表として向き合うのであれば、
相手にも同じようにプロフェッショナルとして
対峙してほしいと思う。

だからこそ、
誰としてその場に立つのか」を決めることは、
とても重要です。

プロフェッショナルとしての“役割”をまとうこと
ある種の“仮面”を持つことは、
社会人にとって必要なことなのかも知れません。

 

— それは「自分を大きく見せる」こととは違うのでしょうか。

 

谷本有香さん
「自分を大きく見せる」というのは、
ある種のブラフ、ハッタリだと思うんです。

でも、私がやっていることは、そうではないんですよね。

等身大の自分のまま、
でもプロフェッショナルとして、

その場で最高のパフォーマンスを出すための、
いわば武器
なんです。

嘘をついているわけでも、
必要以上に大きく見せているわけでもない。

あくまで、
自分と社会との接面を、どうすれば最大化できるか
という作業です。

「大きく見せる」という背伸びとは、
全く違うものだと私は思っています。

はたから見ると同じかも知れないけれど、
心持ちの問題だと思います。

 

— 自分を大きく見せようとしているのか、それとも「その役割に自分を引き上げている」のか。その違いによって、相手に与える印象もまったく変わってくるように感じます。

 

谷本有香さん
そもそも「大きく見せる」という行為は、
どこか恣意的です。

大きく見せなければいけない、ということは、
何か足りていない部分を埋めようとしている
ということでもある。

ネガティブな作業ですよね。

一方、プロフェッショナリズムは、そうではない。

欠落を埋めるのではなく、
今ある自分を社会に対して最適な形に
チューニングしていくこと
です。

友達と話すときはタメ口でも、
上司と話すときは敬語になる。

それと同じで、相手が首相であれば、
それにふさわしい言葉や思考で向き合う。

「大きく見せる」ことではなく、
社会人として当たり前のチューニングです。

 

— そのスタンスを持っていても、うまくいかなかったご経験はありますか。

 

谷本有香さん
あまりない、という認識です。

私は世界のトップ、
いわば最高峰のプロフェッショナルに
インタビューしているわけですから、

同列になれるとは、そもそも思っていません。

私はあくまで「素人の代表」として聞いている

これはどういう意味なのか、なぜそうなるのか——

分からないことを素人として理解し、
咀嚼して伝えるのが私の仕事です。

だから、知識量で圧倒されたり、
打ちのめされることもありません


むしろ、知識量で圧倒されるのは、
自分を大きく見せようとしているときだと思います。

「分からないんですが、これはどういう意味ですか」
と素人として聞いているだけなので、
そのスタンスを咎められることは、まずありません。

このスタンスを崩したことはないし、
だからこそ大きな意味での挫折を
感じたこともない
んです。

むしろ、
「分かりやすく聞いてくれてありがとう」
と言っていただくことの方が多い。

金融経済のアンカー時代に
「きちんと理解しているの?」
と指摘を受けたことはありましたが、

うまくいかなかったという感覚はありません。

自分のスタンスの問題だと思っています。

 

— 今のお話を伺っていると、「自分を大きく見せる」という発想自体がなかったということがよく分かります。お仕事の上では、挫折を感じることはなかったのでしょうか。

 

谷本有香さん
「何をもって挫折とするのか」
という問題はありますが、

私はあまり辛いことを
「辛い」と感じないタイプなんです。

仕事の中での苦労も、
どちらかというと成長の機会として楽しめてしまう

だから、
挫折だと思ったことはほとんどないんです。

参考にならなくてすみません。

 

— 素晴らしいなと思います。私はすぐに「傷ついた」とか「自分はまだまだだ」と感じてしまうので。

 

谷本有香さん
私も「まだまだ足りない」とは常に思っています。

ただ、それで心が折れるというよりは、
「まだ足りないから、じゃあ頑張ろう」
というモチベーションに変わるんです。

挫折していないというより、
心が折れていない、という感覚に近いかもしれません。

 

— お仕事以外ではいかがですか。思い通りにいかないことも多いのではないでしょうか。

 

谷本有香さん
それは、もちろんたくさんあります。

ずっとフリーランスでやってきているので、
思い通りにならないことの方が多いくらいです。

決まっていた仕事が急になくなることもあるし、
採用されたと思ったらやっぱり必要なくなった
と言われることもある。

女性である以上ライフイベントもあって、
働きたいときに働けないもどかしい時期もありました。

今もそれは続いています。

フリーランスは、
そうしたタイミングで仕事がゼロになることもあるので、
そこからまた立て直していくのは簡単ではありません。

ただ振り返ると、
そういったプライベートでの苦労や挫折も、
大きな糧になっている
と感じています。

さまざまな審議会などに関わらせていただく中で、
自分自身が経験してきた苦労や辛い経験などが、
そのままアイデアの種になって、
今の仕事につながっている。

当事者としての経験を持つ人が
必ずしも多くない中で、

私はその経験を一つの価値として
提供できている
と感じています。

そういう意味では、当時の経験は、
今では宝物のように思えています
ね。

 

— どうやって乗り越えてこられたんでしょうか?

 

谷本有香さん
実は「乗り越えた」という感覚はあまりなくて。

今も介護は続いていますし、
そもそも乗り越えられるものではないとも思っています。

だから私は、
「乗り越える」のではなく、
“with”でやっていく
という感覚です。

困難と共に生きる心構えを、学んでいく。

人間は誰しも、
何かしらを抱えながら生きている。

そう思えたときに、
「乗り越えなければいけない」という考え方自体が、
少し変わりました。

もちろん、乗り越えられるものもあるし、
頑張って乗り越えることが必要な場面もある。

でも、すべてがそうではない。

乗り越えられないものもあるし、
それと一緒に生きていく、という選択もある。

大事なのは、
そのときの自分の心をどう整え、
どう向き合うか
だと思っています。

今振り返ると、
人生のどん底のような経験も、
味わい尽くしてよかったなと思えます。

マイナスを深く知った人ほど、
プラスの喜びも深く感じられる


その経験があったからこそ、
日常の中にある小さな幸せにも
気づけるようになったのだと思います。

ご飯を食べられること、家族と笑い合えること——

そういう当たり前のことが、
どれだけ幸せかを実感できるように
なった。

もちろん、無理に乗り越えようとしなくてもいい。

やり過ごすという選択もあれば、
しっかり向き合って味わい尽くすという選択もある。

どれも一つの在り方です。

私は、結果として
「味わい尽くせてよかった」と思っています。

 

— 私はこれまで、「挫折や苦しいことは乗り越えなければいけない」と思ってきました。ただ、今日のお話を伺って、下がった分だけ上がる幅も大きくなる、という捉え方を持ってみたいと思いました。

 

谷本有香さん
自分の人生を、
一本の長い映画だと捉えてみるといいと思うんです。

80年かもしれないし、100年かもしれない。
もしかすると、それより短いかもしれない。

でも、その中で自分が主人公だとしたとき、
何も起きない映画はやっぱりつまらないじゃないですか。

苦しいことや試練があるからこそ、
物語としての面白さが生まれる。

だから、
「あ、今このシーンが来ているな」と捉えてみる

少し客観的に楽しむくらいの感覚で向き合えるといい。

辛い場面も含めて、味わっていく。

それが、人生の醍醐味になっていく気がします。

 

— 少し俯瞰して自分を見る、ということですね。

 

谷本有香さん
私自身、一番つらかった時期に、
ビクトール・フランクルの「夜と霧」に出会って、
すごく救われました。

いろんな本を読んだり、
人に相談したりもしましたが、
そのときはなかなか救われなくて。

でもあの本を読んで、
「少し離れて自分を見る」という感覚を知りました。

もちろん、傷ついているときに
それをするのは簡単ではありません。

でも、1ミリでもいい、0.5ミリでもいいから、
自分を俯瞰して見てみる。

それを積み重ねていくことで、
心の中に“バリア機能”のようなものができていく。

そんな感覚がありました。

 

— 映画『ライフ・イズ・ビューティフル』のように、苦しい状況の中でも、それを意味づけていくような感覚ですね。

 

谷本有香さん
人生って、本当に一瞬だと思うんですよ。

その中で、
苦しみにとらわれ続けるのではなくて、
どうやって楽しみに変えていくか、
笑い飛ばしていくか


そういう姿勢が大事だと思います。

楽観性を持つこと。
そして、味わい尽くすこと。

たとえ苦しいことでも、
味わい尽くせるだけの余裕を持てたなら、
それが人生を豊かにしていく


もちろん、
すべての苦しみが乗り越えられるものではありません。

本当に大きな苦しみというのは、
簡単には逃れられないものです。

貧困の苦しさや、大切な人を失う悲しみ——

そういったものは、
「乗り越える」というより、
どう向き合うか、どう共に生きていくか、
という話になる。

でも、その悲しみを知っているからこそ、
見えてくる喜びもある


そのバランスを、自分の中でどう整えていくか。

それこそが、人生の醍醐味なのかもしれません。

 

— 谷本さんは、とても強い方だという印象を持っていたのですが、実際にお話を伺うと、しなやかで、温かい方だと感じました。

 

谷本有香さん
ありがとうございます。

フリーランスとして長く仕事をしてきた中で、
いろんな立場の人の機微を見てきましたし、

自分自身も嫌な思いをしたことがあるからこそ、
苦しい立場にいる方の気持ちが、
少しずつ分かるようになってきた気がします。

そういう意味では、
いい経験をさせていただいたなと思っています。

 

— 本当に、どんな経験もすべて宝にされているんですね。

 

谷本有香さん
悲しいことがあったときに、どう寄り添うか。
そこでいつも思うことがあります。

各国に友人がいる中で感じるのですが、

日本の方はどうしても、
「大変だったね」「つらかったね」と、
気持ちに寄り添って聞いてあげることが多い。

それもとても大事なことだと思います。

でも、海外では文化的に
It’s gonna be alright(大丈夫だよ)
と言うんですよね。

もちろん、本当に大丈夫じゃないこともある。
「大丈夫じゃないよ」と思う場面もある。

でも、あの言葉の持つ力は、すごく大きい

私はどちらかというと、
「大丈夫?」と聞かれるよりも、
「大丈夫だよ」と言われたいタイプです。

すごくつらいときに人に話せなかった理由も、
実はそこにあって。

「かわいそう」「大丈夫?」と言われると、
自分が余計に落ち込んでしまうのが
分かっていたからです。

だから、何百冊もの本の中から
自分の中で「大丈夫」と思える言葉を探してきました。

でも、海外の方に話すと、
「よくやったね」「よく乗り越えたね」と、
前に進む言葉をかけてくれる。

日本も、「大丈夫?」ではなく、
「大丈夫だよ」と言える文化になったらいいな、

と思っています。

それは、
実は経済にもつながっていると思うんです。

経済って、結局「気持ち」なんですよね。

「景気」と言うくらいですから。

でも日本はどうしても、
「円安ですよね」「景気が悪いですよね」と、
ネガティブな言葉が先に出てしまう。

そうではなくて、
どうやって気持ちをポジティブにしていくか

そこがすごく重要だと思っています。

だからこそ、Forbes JAPANが掲げる
「ポジティブジャーナリズム」という考え方が、
私はとても好きです。

ポジティブな視点で社会を見ることで、
日本全体を元気にしていく。

それは企業経営でも同じです。

「今は厳しい状況ですよね」ではなく、
「大丈夫です」「一緒に乗り越えていきましょう」

そう言えるリーダーが増えたら、
この国は大きく変わると思います。

海外の良い部分も取り入れながら、
日本の強みと掛け合わせていく。

そうやってポジティブな空気を作れれば、
日本の経済はもっと良くなる

長年、金融や経済の現場に関わってきて、
その確信にたどり着きました。

今は、とにかく
「気持ちを上げていく」ことに尽力しています。

景気を良くしていくためにも、
ポジティブな気持ちをどれだけ作れるか。

そこがすごく大事だと思っています。

 

— さまざまな学問も学ばれてきた中で、最終的に「経済は気持ちだ」というところに集約されているんですね。

 

谷本有香さん
行動経済学など、
いろいろな理論はありますが、

結局は人の気持ちによって行動が変わり、
その結果として経済も変わっていく

私はそう感じています。

ただ、日本のメディアは
どうしてもネガティブな報道が多い。

それに引っ張られて、
全体の空気もどんどん暗くなっていく。

ある意味で、当然のことだと思います。

そうではなく、
なるべく良いところにフォーカスして、
スポットライトを当てていく

日本は、まだまだ捨てたものじゃないし、
本当にいい国で、いいところがたくさんある。

そこを発信していくことが大事です。

例えば、文句を言いたくなる場面でも、
10あるうちの5くらいは言わない。

それだけでも、
日本はもっと明るくなると思います。

そうやって空気が変われば、
経済も未来も、自然と明るくなっていく

私はそう確信しています。

 

— 私は大阪に住んでいるのですが、愚痴や悲しいことを話すと、笑い飛ばしてくれる文化があるんです。一緒に愚痴を言う人よりも、笑い飛ばしてくれる人に話す方が、結果的に楽だったりします。

 

谷本有香さん
本当にそうですよね。

気持ちの持ち方はすごく大事で、
どんなにつらいことがあっても、
その中に一つくらいは光がある

どこに目を向けるか——

それだけで、
見える世界は大きく変わります。

事実そのものは変えられない。

だからこそ、気持ちの持ちようなんです。

例えば、今は「円安だ」と言われていますが、
私が金融の現場にいた頃は、
「円安にならないかな」と言っていた時期もあった。

円安になれば、自動車産業や電機産業など、
日本の基幹産業が活躍しやすくなるからです。

同じ現象でも、
見方によって意味はまったく変わる

だからこそ、
笑い飛ばすことや、明るい側面を見ることは、
とても大切
です。

私自身も、
よく「笑い飛ばしていこう」と言うんですが、

そういう意味で、
関西の文化は本当に素敵だなと思います。

 

— ただ、関西の笑いの中には、人を落として笑いにする部分もありますよね。個人的には、ポジティブな側面にフォーカスした笑いがもっと増えるといいな、と感じています。

 

谷本有香さん
笑い飛ばすこと自体はとても大切だけれど、
どうせなら、ポジティブな形で。

そういう空気が広がっていくと、
もっといい社会になるんじゃないかなと思います。

 

— つらいことを乗り越えるヒントとして「笑い飛ばす」というお話もありましたが、もし今、「まだ笑えない」という状況にいる方がいたら、どんな言葉をかけますか。

 

谷本有香さん
気持ち次第なところは、やはりあると思います。

本当に辛いことがあったときでも、
それを打ち消すような楽しいことが一瞬でもあれば、
気持ちのバロメーターは少しそちらに振れるんです。

だからまずは、
自分で「楽しい側」をつくりにいくこと。

できるだけネガティブに引っ張られないように、
意識的にバランスを取っていくことが大事です。

あとは、「見ない」という選択も大切です。

「辛い」という字に、一本足すと「幸せ」になる、
という話がありますよね。

あれって、すごく本質的だと思っていて。

辛いことを味わい尽くす、という話もしましたが、

まだ軽い段階であれば、
“蓋をしてしまう”というのも一つの方法です。

ただ閉じるのではなく、
楽しいことで上書きするイメージです。

好きなアーティストの動画を見るとか、
推し活をするとか——

とにかく、自分の脳の中の配分を変えていく

ネガティブが占めている領域を、
少しずつ減らしていく。

それを続けていくと、
いつの間にか気持ちは変わっていくものです。

時間というのは、本当に万能の薬なので。

乗り越えようとしなくてもいい。

ただ、のらりくらりと過ごしていく中で、
気づいたら楽になっている、ということもある。

だからまずは、「幸せな蓋」をしてみる

自分の気持ちを守る選択を、
ぜひしてみてください。

 

— 「幸せな蓋」、とても素敵な言葉ですね。本日はありがとうございました。

 

谷本有香さん
ありがとうございました。

 

 

 

谷本有香さん プロフィール

フォーブスジャパン Web編集長。
これまで4,000人以上の世界のトップリーダーにインタビューし、経済・社会・リーダーシップの最前線を見続けてきた。
ニュースキャスターとしてのキャリアを経て、国内外の経営者や起業家と対話を重ねる中で、「何が価値を生み出すのか」「人は何に共感し、動くのか」という問いを探求し続けている。
日本と世界のリーダーを見比べる中で感じてきたのは、単なる経済成長や合理性だけでは測れない価値の存在だった。
職人の技や丁寧なサービス、美意識に根ざしたものづくり——そうした日本独自の強みを再定義する言葉として提唱しているのが「美しい経済」という概念である。
また、AI時代における個人の在り方についても、「自分らしさ」を単なる自己主張ではなく、社会との接点の中で設計していく視点の重要性を説く。
情報があふれ、正解が揺らぐ時代だからこそ、
「何を信じ、どう生きるか」
その問いを、自身の取材と実体験をもとに発信し続けている。